FENDI様とのウォールアートから考える環境問題の解決におけるアートの役割

4月の終わり、大型連休が始まるタイミングで、表参道ヒルズの向かいの建物に12mに渡る田村のアートの展示が開始されました。
原画自体はデスクに収まるほどのサイズですが、表参道を歩く人々の視線を惹きつけるには十分な12mまでに拡大してもなお、クオリティ面では十分な仕上がりとなっている印象です。
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ゴリラやゾウ、トラなど迫力のある動物が描かれていますが、その動物たちは荘厳さだけではなく、皆、優しさをたたえた目をしているように見えました。そして、力強さの中にどこか儚さも表現されているような印象です。
角を曲がった先には海で暮らす動物たちが描かれ、展示されています。
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今回のウォールアートは「希望」をテーマとして、「ダイバーシティ」「再生」への願いが込められています。

描かれている動物たちは絶滅危惧種で、これは私の解釈ですが失われつつある「ダイバーシティ」の象徴としてこれらの動物たちが描かれていることが考えられます。

そして、動物たちに並ぶ存在感を放ち、アートに華やかさを添えているのが「希望」の花言葉を含む花々です。絶滅の危機に瀕し、自然界から失われつつある「ダイバーシティ」の象徴である動物たちを「希望」の花々が囲み、「再生」に向けた希望が伝わってくるような作品です。

今回、ご依頼をいただいたFENDI様、原宿表参道欅会様の狙いは「アートを通じてポジティブなメッセージとエネルギーを、多様な人々が行き交う原宿表参道の街に届けたい」ことであると発信されました。地球上で絶滅に瀕している動物たちの危機、失われつつあるダイバーシティをテーマに社会課題の提起をしながらも、そこに希望を示す花々を添えて再生を暗示することで、明るい未来を見据えられるような仕上がりになっています。

では、これらの絶滅危惧種の動物たちは、このアート作品に描かれているように実際に再生に向かっているのでしょうか。おそらくは私たち人間の営みを変えていかなければ、再生に向かうことは難しいというのが多くの動物たちを取り巻く現状ではないかと思います。

今目の前にある幸福、短期的な経済成長を追いかけた結果、これらの動物たちを絶滅の危機に追いやる一因となっているということは多くの団体、メディアから発信されているところで、これらの現実を受け止めて、私たち一人ひとりが行動を変えることでしか、未来を変えていくことは叶いません。

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ダイバーシティの実現におけるアートの役割とは

環境問題や生態系におけるダイバーシティの維持を実現していくに際して、私たち人間一人ひとりが行動を変えていく必要がありますが、行動を変える前段階に必要なことが思考のアップデートです。

今世の中で起きている問題を自分事として捉えることがはじまりで、そこから解決に向けて自分にできることは何か?を思考し、行動に移すことで未来は変わっていくため、まず世の中に起きている問題をより多くの人に関心を持つきっかけを作ることが重要だと思います。

そして、アートが持つ大切な役割の一つがここにあり、今回のような人々の目を惹きつけるアートの特性を活かして、環境問題に関心を持つきっかけを作ることができます。

これからもFENDI様のように、環境問題をはじめ地球に存在する様々な事象の課題解決を目指す企業様とのコラボレーションを通じて、田村のアートの力で社会がよりよい方向に向かうためのきっかけ、気付きとなるような活動も行っていきたいと考えています。

橋本