スポーツマーケティングにおけるアートの可能性

2021年2月13日。Bリーグの試合で用いられるオープニングフライトのプロジェクションマッピングがリニューアルし、田村の作品をふんだんに活用した映像に変わりました。
スポーツ×マーケティングにおける取り組みとしては、Jリーグが地域連携、Bリーグは音楽やチアダンスなどのパフォーマンスで盛り上げるなど、各競技が来場者・ファンを増やすために工夫を凝らされています。
この度のリニューアルはそういった動きの中での新たな取り組みで、プロジェクションマッピングに留まらず、スタジアムに行く途中においても、東葉高速線の電車内から、スタジアム最寄りの船橋日大前駅のホームの柱や階段に至るまでを田村のイラストで彩りました。
スポーツ観戦においては、試合中はもちろん、スタジアムに向かう途中の高揚感や試合後の余韻を楽しむことも魅力であり、チームとして試合観戦を試合という点ではなく線で捉え、その体験価値をトータルで高めたいという思いが伝わってきます。
また、クリエイティブにおいては、瞬間を切り取る写真ではなく、静止画ながらあたかも動き出しそうな田村の作品に宿る躍動感が重要な役割を担っており、等身大以上のサイズの柱などに用いることで更なる迫力を演出しています。
ここで、今回の一連の取り組みについて、ビジネスの観点で果たす役割についても考えてみたいと思います。
田村のイラストを活用したクリエイティブがビジネスにインパクトを与えうる要素としては、主に「人の目に触れる数」「来場率(目に触れた人のうち、来場に至った割合)」「再訪率」「紹介率(≒2次的に人の目に触れる数)」が挙げられますが、広告以外にもSNS上での多数のシェアやメディアに取り組みが紹介されたことにより「目に触れる数」が大きく増えた他、先述の観戦客の体験価値向上を高めたことで、特に「再訪率」や「紹介率」にも寄与したのではないかと考えられます。
チームが公表している数値上では、コロナ禍による外部要因の影響があり、取り組みを実施したタイミングにおける観客動員数の目に見えた伸びを確認することはできませんでした。一方で、コロナ禍の影響により、人が集まる場所でのエンターテイメントの市場全体が一次的に縮小している状況下において、こういった新たな取り組みをすることで状況が改善した時の回復基調を高めることが期待できます。そして何よりも、閉塞感が溢れる空気を打破する圧倒的なワクワク感を演出したことで、観戦に訪れる人々の笑顔が増える取り組みになったのではないかと感じました。

橋本