瞬間をストーリーに変えるイラストの力

こちらは明光ネットワークジャパン様の新規事業『ESL club』(小学生を主対象とした英語塾)のWebサイトのキービジュアルとして、田村が描き下ろしたイラストです。かつてESL clubで学び、世界へ羽ばたいていった当時小学生の男の子が留学先でスピーチする姿と、その姿を温かく見守る海外の生徒さんたちを描いています。

このイラストを描くまでの過程で、私はESL clubに通う保護者の方々にインタビューを行い、子どもに将来なっていって欲しい姿を伺いました。

保護者の方々には「人に流される人間にはなってほしくない」「自分で問題解決できる自立した大人になってほしい」という願望があり、そのために、「早い時期に挫折を味わわせたい」「早く視野を広げてほしい」といった思いから、早期に英語学習に力を入れているということでした。

ESL clubはもちろん英語力を高めるためのカリキュラムも優れていましたが、機能的な部分だけでは先述の保護者の心を動かすことは難しく、英語力を高めた先の世界観・目的を伝えることが必要だと感じました。そこで、中学生から海外進学を果たした男の子をモデルとし、人物の内面をより引き出し伝えることができる田村のイラストを活用することにしました。

それまでは写真素材をキービジュアルとしていましたが、写真はカメラが切り取った一つの瞬間であり、この瞬間に、その人物が内面から放つオーラを吹き込んで描くことで、「瞬間」を「ストーリー」に変える力がイラストにあると信じて、イラストを選択しました。

イラストを制作してWebサイトへの掲載を行った後、サイトへの流入あたりの問い合わせ率は大きく改善し、その後も教室の雰囲気を伝える動画やシンプルなテキストなどいくつものクリエイティブとの比較テストを行いましたが、イラストを覆すものが出てくることはありませんでした。

科学と芸術

ESL club様の扱う英語教育に限らず、多くの分野において、商品やサービスの機能面での差別化は日に日に難しくなっています。そして、その商品やサービスを伝える手法であるマーケティングにおいても、インターネット上にコンテンツが充実して一般化が進んできていて、差を付けることが難しくなってきています。様々な企業様へ事業コンサルタントとして関わらせていただく中で、問題解決を行う科学的なアプローチだけでは差が付きにくい時代に突入していることを痛感しています。

一方で、芸術は人々の感情を解放するアプローチにより、商品・サービスへの選好度を一気に高められる可能性を持っていることも合わせて感じており、私が向き合う企業様の事業課題の解決策としての芸術の可能性をこれからも模索していきたいと考えています。

橋本